※若干の性的な描写がありますのでご注意下さい。見なくても本編に関係ないです。 「おう、タケちゃんいらっしゃーい。あれ?ギリオは?」 「あ、コンビニに用があるから先行ってって。こんにちわイコさん」 「仲いいねー」 「あはは。イコさんとも仲いいじゃないですか。 オレ、ちーとん…ギリオ君が呼び捨てにするほど仲良い人、見たことないですよ」 「仲がいいっつーかぁ…」 [ Three years before ] 3年前。イコは27歳でギリオは中2。 知り合っておよそ3ヶ月後。色々いさかいや衝突は絶えなかったものの、 ようやくお互いの座る位置や距離感が定まり始めた頃だった。 「あ。そーだ、オレ今日合コンだからさぁ。晩飯いらねーよ」 ギリオ宅で朝食の最中、口を開いたイコに顔を上げる。 「ああ…、わかりました。アパート戻らはるんでしょ?」 「んー、多分ね。ただ明日パソコン貸さなきゃだから朝とか昼寄るかも。 まぁ普通に閉めててくれれば」 既に合鍵を持っているイコは、勝手に入って勝手に出て行くことも多く、 週に3・4回顔を出しにくる。泊まることも近頃は増えた。 「ちゃんと戸締りして、ガス栓とかもちゃんと閉めて寝ろよー。 お前こないだも電気点けっぱだったろ」 「…わかってますよ」 あからさまに不満そうな、「うるさいな」と言いたげな表情が子供っぽくて、笑いそうになる。 イコの従妹であるユリの存在があるから、あまり強く出れないのだろう。 ぽんぽんと肩を叩いて立ち上がる。 「あ。ちゃんと片してくださいよ戻らへんねやったら」 「う、目ざといねギリオ…」 「オレも学校行くんで。遊びはるんやったら彼女にちゃんと説明してくださいよ」 「はいはい、わかってますよ!っとにもー、お前可愛げ無いねぇ」 涼しい顔で味噌汁を飲むギリオを見て、息を吐いた。 当時、合コンにも積極的だったが恋人も居り、当然『夜遊び』にはいい顔をされてない。 何度か電話で喧嘩しているのを聞いていたのだろう。 それから小競り合いじみたやりとりの後(無論イコは食器を片付けた)、 イコとギリオはそれぞれ出かける―― 何時も通りの朝だった。 * イコの恋人(性格はイコ曰く『几帳面で可愛くてエッチ』)』が、アパート泊まりに来ることも珍しくは無い。 だから、その日、合コン帰りでデロデロに酔ったイコが部屋の布団が膨らんでるのを見ても、 何の疑問もわかなかった。 (なんだ…今週来ないっつってたのに来たのか…) 酔いが醒めきらない頭の片隅で(お持ち帰りしなくて良かった…)と思った。 歴代の恋人で同じシチュエーションで修羅場を経験していたからである。 (……。寝る前にちょっとだけ…) エロ談義に花を咲かせて居たので、有体に言えばムラムラしていた。 酔っぱらいにセックスできるかはともかく、このまま寝るのも何となく癪だ。 そういう思考回路から、軽い気持ちで悪戯(性的)を思いつく。 かけ布団を掴み、上半身に軽く乗っかる程度まで横に退けると薄水色のパジャマが見えた。 ズボンに手をかけて下着ごとずらすと、脱がすまでも無く目的のものは見える。 イコの恋人―― 男性の場合は簡単なことだった。 ギリオが勘違いをしていたのも無理は無いが、イコの恋人は正確には『彼女』では無い。 『彼女』と呼ばれればを否定もせず、見た目も完璧な女性だったが 脱いだら体は男といういわゆる『男の娘』や『ニューハーフ』に当たる。 (余談だがイコは男性的な男性とも、女性的な女性とも恋人だったことがある。 そのストライクゾーンの広さをギリオが知るのはまだ後である) だから、下着をずらして露になったのが男性器でも驚くことは無い。 多少開いていた足の間に体を入れて、露出させたものに舌を這わせる。 明らかに一方的な夜這いであるが、当時はそういう関係だったので問題ない――筈だった。 「ん……」 異変を感じたのか足が揺れた。 丁寧に舐めあげたり、それごと咥えて上下させたり刺激を与える。 口と手の中でそれが硬度を増していくのに、そう時間はかからなかった。 「…、あ……っ……」 体重を支える右手とは別に、空いていた左手も同じ目的の為に動く。 酔っては居ても、恋人の弱い箇所は覚えている。 ぐりぐりと先端を抑えながら下の方を吸い上げると、唾液以外の体液が滲むのが感じられた。 (あれ、オレもたってきたかも…) 悪戯から本気のもの…要はセックスに計画を変えようかと、イコが思いはじめた矢先、 どうやら相手は目を覚ましたらしい。 「ん、…えっ…?!な、に……っ!?」 「――……?」 驚いた声を聞いて、咥えたものから一旦口を離す。 驚くのは予想内だ。気遣ったわけではない。ただ、声が、普段のものと違っている。 ―― その時は気付かなかったが、よく考えればいつもと違うところは多かった。 イコのアパートならベッドのはずが、床に敷かれた布団であることとか。 パジャマも、恋人のものでもイコのものでもないこととか。 それに気付かなかったのは、別のところで見慣れたものだったから。 (え?あれ……? このパジャマって…) 起きた相手が肘をついて、少し上半身を起こす――と、かかっていた布団が落ちて、顔が見れた。 くしゃくしゃの茶色の髪の下、いつもは切れ長の目が驚きに見開かれている。 「…、イコさ……ん…?!」 「…え?!ギリオ……?」 豆電球の灯りの下、お互いにこれまでになく驚愕した表情だった。 「なッ…、なに、してんですか…!」 「あ、違う、俺、あの、間違えて…」 「何と間違えて?!」 「彼女と間違えて!!」 「は?!女と間違えるかアホッ!!見てるやろ!!」 男であることは、そのモノを現在も見てるし持っているので明らかだが誤解はそこでは無いのを、 性癖について知らないギリオが理解できるわけも無かった。 ただ状況説明するにはイコも混乱していた。 かつて何度も経験した状況だったことと、酔いで判断力が大幅に欠如していたことが、 気付くチャンスを全て逃してしまっていたのだ。(無論、酔って無ければ恋人のソレとも区別がついた) (え?!ギリオってことは… オレ…。そっか、ここアパートじゃねぇんだ…!) 頭をフル回転させて、混乱を整理する。 自分のアパートに帰ってきたつもりだったが半ば慣習で居候先のギリオの家に帰ってきていたらしい、 そう飲み込むまでに10秒ほどかかった。 「……そっか、ここお前んち?!そっか、そんでお前が…」 「何寝ぼけてんですか…!つか、もう待っ…、離してください…!」 左手は添えるだけの状態だったが、自分の分身(揶揄)に息がかかる距離で 会話されると色んな意味で堪える。 恥ずかしさでこれまでに無いくらい顔が熱くなっていたし、泣きそうになっていた。 恋人ではないとわかったのだから止めることはできたのだが、 (でも、こんな状態で…?) 男として辛い状態なのは見ればわかる。続ける方がギリオの為なのではないか、と思った。 それに加えて、こんな時だが、気持ちが(エロ方面で)盛り上がっていた。 (後に、「ギリオの声と顔がなんかエロかった」と語っている) 「――…ごめん」 「…っ、ちょ…指っ…退け…」 「ただ俺の責任だし、やっぱり」 「んッ、あ、…っホンマに無理です、お願い……」 「放っておく、――…わけにはいかないから」 「っぁ、イコさん…!無理です、…だめです、あっ、い…!」 イコの言葉が途切れ途切れなのは口が喋る以外の作業をしているからだ。 混乱している上に急所を握られては、力づくの抵抗がギリオにできるわけもなく。 達するまでイコのファインプレー(性的な意味で)は続いたが、その詳細はここには書けない。 数分後、白濁の液体を口からティッシュに吐き出しつつイコは思った。 (アレッ…… これは…犯罪…?) 疑問に思うまでもなく、犯罪ですありがとうございました状況だ。 このときに手錠をかけられる自分のビジョンを浮かべ、完全に酔いが醒めた――が、 『わいせつな行為』に値するコトはもう終わっている。 おそるおそる、隣に寝ているギリオを見下ろす。 ティッシュを取る為にイコは起き上がったが、ギリオは横に丸まるように寝転がったまま動かない。 「――…、っ……」 荒い息を整えてるらしい。時折鼻を啜る音が聞こえるのは多分、泣いているのだろう。 (何の経験も無い男子が寝てていきなり成人男性にフェラされたらまぁ泣くだろうな…) と冷静にイコは受け止めた。 かろうじて救いだったのは挿入に挑戦しなかったことくらいだ。 「……あの…ギリオ……」 「………」 「ごめん…。その、酔ってて……自分の部屋かと思って…。 あ、今、オレ、オカマちゃんと付き合ってて、その子かなって…」 「………」 隣に正座をして、説明をする。 どんな言葉を捜しても10:0でイコに非があった。事実なので仕方が無い。 しばらく、気まずい沈黙が続いた。出て行くべきだろうか。そうイコが考え始めた矢先、 「………悪いと思ってます?」 「!!! 思ってる!!思ってるよ!!」 ようやく聞こえたギリオの声に、全力で頷く。沈黙が一番辛いのだ。 「そうですか……」 のそり、とギリオが起き上がった。 その時の表情を見ることはできなかった。 バチィイン!!!!! 直後、部屋中に音が響き、何より顔に強い衝撃を受けて吹っ飛ばされたからだ。 「ほな出てけやドアホー!!!!!」 この時のビンタの衝撃を、イコは後日『雷が落ちたのかと思った』と語っている。 「いった!!ちょっ、待って!オレ明日仕事なんだって!!!」 「知るか!!しね!!!土に還れ!!!」 「あがっ!!いったい!痛い!!投げないで!!わかっ、わかった!!」 ほうほうのていで投げられた上着と財布を掴んで逃げる。 このとき幸いだったのが、ギリオが物を大事にする主義だった為、 凶器になりそうなもの(文房具や灰皿など)がごろごろあったが其れは投げられずに済んだ。 だが怒りが収まってないのは気迫からわかる。 蹴りだされた玄関先で、イコが土下座の体制になるのもスムーズなものだった。 「サーッセンしたァっ!!!ホント許してください!!お願いします!!!」 「おい」 「ごめんな……えっ?!ハッ、はい!!」 うってかわって、静かに告げられた声。 見下す絶対零度の視線に思わずビクッとなる。 「静かにせぇよ。起こしたらホンマに通報するからな」 「・・・・・っ!!!」 ―― ピシャン!!!! イコの目の前で、扉が閉められた。 * 「そのあと朝まで締め出されてさー。1週間口利いてくんなくて。 次からは呼び捨てになってたね。アッハッハッハ!」 「それはそうでしょうね…っていうかそれ人に言わないほうがいいですよ!!」 イコは朗らかに話していたがとんでもない内容だった。竹田は青くなる。 「大丈夫言ってない言ってない!タケちゃん以外には。 だからさー、多分まだどっかオレのこと怒ってんだろーね」 「…かもしれないですね」 (そういえば、3年前… 1週間くらいちーとんピリピリしていた時あったな…) 不安定な時期だったので落ち込んでることや考えこんでいることはよくあったが、 怒っているのは珍しく、理由を聞いても教えてくれなかったのを思い出す。 心配だったからしつこく聞いたので覚えている。…確かにこれは言えない。 (むしろよく同居できているよね…!!) ある意味でギリオの許容範囲に感心した。 「ただいま。…あれ、イコお前今日仕事とちゃうん」 「半ドンでーす。おかえり。タケちゃんも居るよ」 「ちーとんおかえりー。お疲れ」 「うん。ほなイコ邪魔しなや?テスト勉強やねんから」 「わーかってるよ!静かにAV見てる」 「そこまで言わんでええわ」 (まぁ、仲良いのならいっか…) 色々はあったのだろうけど、人見知りの友人が打ち解けているのを見るのは嬉しいことだ。 人間ができている竹田は、前向きに捉えようと思った。 5分後ギリオの尻を撫でたイコが殴られているのをみて、ちょっとついてけないなとも思った。 【END】 ギャグの範囲のエロということで…。 イコは中学生は範囲外なので、普通手を出しません。 その後夜這いをかけたのはストライクゾーンの高2になってから。何度となく殴られてます。 12.5.27 |